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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
前面と横、カーブ状の巨大パノラマモニターに、【Season】の文字が飛び跳ねる。
もう少しだ。
もう少しで始まる――。
あたし達ファンの興奮はMAXで、あたしも委員長も始まる前から声を張り上げて、皆と一緒にSeason&Haruコール。
まるで野生の凶暴化したゴリラのように、ウッホウホ。
そして――。
画面から文字は一度消え……画面を分断するように縦に現われた光線は、下方だけがくくくと左右に広がり、ハの字型となった。
なに、なにが始まるんだろう。
ドキドキ、ワクワク……。
そしてハの字の頂点に点滅している点が、次第に大きくなりながら少しずつ下方に近づき、それに伴いハの字も形状が変わる。
ああ、これは遠近法を用いた道なのだ。
なにかが歩いてくる。
そう、なにか……。
あれは――。
「!!!?」
1匹の……ピンク色のウサギ。
そう、先ほど二度ばかり見た、あのピンクのウサギだ。
画面は煌びやかな幾何学模様じみた光線のシャワーがちらつき、光線で象られた光の道に沿うように、そのアングルを変えながら、ウサギはこちらに近づくにつれて大きくなる。
……ぱたぱたと、大きなもこもこ足で二足歩行。
フードについたふさふさなお耳を揺らして、ややガニ股気味に動きづらそうに歩いてくる姿は、どうみてもあたしの知る小動物ではない。
ウサギと愉快な仲間達は、まさかSeasonライブで、堂々と宇佐木呉服店の宣伝をしようとしているとか?
いやいや、ありえないだろう。
だってここはSeasonの独壇場。
帝王がなにか仕掛けているかもしれない場所はドームのお外、ここは帝王が手出しが出来ない神域なのだから。
じゃああれは映像? CG?
まるで暗闇の向こう側から、本当にウサギが現われているようではあるけれど、実際のステージにはなにもなく。
それが前もって用意された映像ではないとあたしが思い始めたのは、そのウサギが……ついしがた見た、あたしが昨夜穿いていた赤いパンツをつけていたからだ。
パンツだとわからなければ、ウサギの可愛さに拍車をかける飾りだが、わかれば恥ずかしくて居たたまれなくなる。
ああ、やっぱり。
大きくなるあの顔は……ナツだ。