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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
 

「しかし、すごいわね、この曲のアレンジ」


 委員長がぼやく。


「既成のものを壊さずして、別物に作り替える。まさかあの曲が、こんなウサギの曲になるなんて……」

 確かにそうだ。

 編曲家は数多いといえど、歌詞や旋律からしてそれと融合出来るほどの力量がある者がいたとは。 

 これもHaruの編曲なんだろうか。

 まるで彼らのイメージにそっていないし、やはりこれはナツウサギだから可愛いと許されるものであって、TOPアイドルの曲としてはいただけない。

 ナツの編曲だろうか?


 ああ、ナツウサギに心がほっこりする。

 ナツは表情が可愛いんだ。


 整いすぎたあの顔でにっこりされると、それだけでこっちもにっこりしてしまうほど魅力的だから。


 ぴょこん、ぴょこん。

 
 完璧王子顔とミスマッチな、短く見えるだぶだぶあんよの動きがまた、我が子が遊戯会で踊っているようなハラハラした心地で、思わず応援したくなる。



「「「"ずっぎゅ~ん"」」」



「怖いわ、私までウサギ菌に汚染されたのかしら。体が勝手に動く……」

「あ、あたしもやってた……」



 そして曲が終わる。


 ナツが人参をかりと口に咥えて上目遣い。

 そこでにこっとウサギスマイルをすれば、悶絶者多発。


 19歳の現役モデル、恐るべし。


 ナツが人参を口に入れたのはただのジェスチャーではなかったようで、人参の中からするするとなにか引き出し、それをナツの手が上に持ち上げれば、垂れ幕となった。



【編曲&ボーカロイド調教:相楽遙人

 踊り:なちゅウサギ】


 そして下に、申し訳程度の小さな文字で、

 【協賛:宇佐木呉服店】

 とある。


 見事な毛筆……あれはハル兄の字だ。

  
 皆がざわめく中、人参マジックでナツの出番は終わったようで、深々と頭を下げたあと、ナツは両手を振って"バイバイまたね"と口を動かした。


 また、があるらしい。


 ほっこり、愛らしいウサギが照明が落とされた闇に消えて行く。


 最後まで、なちゅウサギは手を振って笑顔だった。

 なんだか別れがたい……そんな寂寥感に囚われた時である。




 GUWOOOOOOOOOOO!!



「ひっ!!?」



 地獄の底から轟いているような、もの凄く低い声がしたのは。

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