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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
死に際の絶叫なのか、それとも手負いの野獣の咆哮なのか。
はたまた凄まじいイビキなのか、積もりすぎたストレスが爆発しているのか。
左右から、真っ赤なスポットライトがあてられる。
それら……まるで血の真紅色のような赤い光が交差する場所に、マイクをもった"それ"が居た。
黒いウサギの着ぐるみだ。
被ったフードにはふさふさの黒い毛の長い耳。
顔には黒いサングラス、タバコを咥えている。
片手を腰に当て、片足に重心をかけて斜めに構えるその立ち姿は、愛想を振りまいた"なちゅウサギ"に比べれば、かなりふてぶてしいもので。
どこかであの姿を見たことがある気がする。
その黒ウサギが、片手に持つマイクであの恐ろしい声を発しているようだ。
「すごいわ。"デスボイス"って誰にでもできるものではなく、しかもこれだけ長く叫び続けられるのは、凄まじい声帯と声量の持ち主ね……」
あれをあたしが真似したら、絶対喉がイガイガして咳が止らないだろう。
下手すりゃ声帯潰して、一生年寄のような嗄れた声になる。
「あの黒ウサギは誰なのかしら。これも余興? Seasonの誰かがあの着ぐるみきているとか? だけどSeasonにはここまでの声量のあるひとはいないわ」
ねぇ、もしかして。
もしかしなくてもさ……。
血まみれのような光の中に浮き立つオーラ。
全身黒づくめだというのに輝かしいまでの背光は。
あれは――。
「ねぇ、ピンクの"なちゅウサギ"が袖に出て来て、なにか巻物を拡げたわ。なになに……"ここから先、はりゅウサギがお届けします"」
ハル兄だ。
帝王様だ。
なんでハル兄までウサギの着ぐるみなの?
"ウサギと愉快な仲間達"を設立していたくせに、なんでピンクじゃなくて黒ウサギなの?
……リーダーは俺様だという自己主張?
極度の黒好きのハル兄が、ピンクに染まる事態を許すはずはない。