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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
しかし帝王様自ら、捕獲対象となる軟弱動物を模したというのに。
いつもの筋肉質の体ではなく、ダボダボの(メタボ?)のコミカルな体を披露したのに。
……まるで可愛さの欠片がない。
デスボで鳴いて、サングラスして、タバコ…。
さらには、赤い光に照らされたまま腕を組んで……ガンつけるようにしてあたりを見回すと、斜め前に出した右のもこもこあんよをバン、バンと苛立ったように、定期的に叩き続ける。
はりゅウサギ様は、ご機嫌が悪いのだろうか……。
コミカル系でもほのぼの系でもなく、ただただ妙な威圧感を見せるウサギに感じる雰囲気は、限りなくホラーに近いオラオラ系。
息をすることすら躊躇する……そんな奇妙な緊張感漂う会場の中、観客は声ひとつあげられない。
さっきまでの連帯感溢れた熱気は何処へ行ったのか。
今はただ、冷えた空気に凍えるのみ。
"ハル兄、可愛いウサギさんだね"
などとお世辞でも述べた途端、真っ赤なおめめでシャーと牙を剥いて、がぶりとのど笛噛まれそうだ。
……あれ、ウサギってそんな生き物だったっけ?
とにかくも、ツッコミどころ満載の格好をして、感想のひとつも述べさせないほど威嚇してくる帝王は、ウサギになっても傲岸不遜なウサギらしく、愛玩動物の括りには絶対入れて貰えないだろう。
あんなガラの悪いウサギ、言うなれば――。
「凶悪ウサギ……」
そうぼそりと呟くと、凶悪ウサギの頭がぐりんとこっちに向いて、その口元が"あ゛~!?"とばかりに、威嚇に吊り上がってきたから、あたしは慌てて口を両手で押さえてその場で縮こまり息を潜めた。
ハル兄が聞こえているはずはないだろうが、地獄耳のハル兄に限って完全否定も出来ない……。
こわこわこわこわ……。
あのウサギ、怖っ。