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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
「……またねっ!! おねーたん、おっさん」
その子の声が聞こえる。
「うん、またね!!」
「今度ははぐれるなよ!! つーか、おっさんはやめろ」
あたし達も返した。
逆光で見えないそちらに向かって。
ますます光が強まる。
そして向こう側からの声は、光と共に消えた。
痕跡すらなにもない。
まるで幻影だったかのように、そこには誰も立っていなかった。
なにか寂しい。
気づけば、ハル兄があの子から手渡されたものを見ていた。
それは、「にこにこほいくえん」と書かれた、園児の名札。
『さえきあき』
「あはは。あの子も"さえき"って言うんだ。ハル兄、ナツ、そしてアキちゃんか。狙ったような名前だね」
「なぁ、シズ……。あの子、最初からお前にも俺にも懐いていたよな。それに人見知りだと言っていたあの母親も、お前の声に似ていた……」
それはあたしも感じていた。
そして旦那の声や物言いは――。
「あははは。もしかして未来からきた……あたし達だったりして? ハル兄の子供なら、間違いなく卑猥だしね」
それはあたしとハル兄が結婚して子供がいたらのもしも話。
ありえない冗談だったのに、ハル兄はあたしを小突かなかった。
ただ羨ましそうな目を、もう見えなくなってしまった三人の影に向けて、呟いたんだ。
「だからかな……あのチビ…すんげぇ可愛かった。昔のお前みたいで」
「え……?」
ハル兄は儚げにあたしに笑いかけた。
「俺とお前の子供なら……きっと俺は、今以上に溺愛するぞ」
なんだかあたしとの子供が欲しいと言われているように、そんな勘違いをしてしまいそうで。
だからあたしは誤魔化すように言った。
「ロリコンだものね。だけど同性でもよかったんだ?」
……結果、チョップが飛んで来た。