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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
まるで戦っているかのように力強く突き出される手。
敵を蹴り飛ばしているように高く動く脚。
戦場を駆けているかのように絶えず動き続ける足や腕。
それは中国武術の動きにも似ているように思えたが、委員長曰く……変則的なステップ具合やその動きの基本形は、ロックダンスとブレイクダンスといわれるものだそうだ。
「な、なんで知っているの?」
「……私、高校の時ダンス部だったのよ」
恥ずかしそうに語る委員長、部活は文学部ではなかったんですか。
「じゃあ踊れちゃうの?」
「ああ、ムリ。私マネージャー」
目を輝かせていたあたしは、苦笑する。
確かに、どう見てもインテリの委員長がストリートダンスしていたらびっくりだ。
「それじゃなくても複雑なこの曲のリズムとって、ふたりの動きのタイミング合わせるなんて。しかも難易度高い物を普通に入れてくるのよ。わかる? フィギュアスケートでいえば、至難と呼ばれる4回転半のスピンではなく、5回転のものを何度も連続して入れてきているものなのよ」
わかったような、わからないような。
「理解力が乏しいようね。だったら……。そうね、ひと言で言えば、"ありえない"」
「ありがとう、それでばっちり!!」
あたし用に言い直してくれるなんて、委員長はなかなかに優しい。
「体力と筋力がなければ到底なしえないその動きを、中華風の曲にそうようにアレンジ……すごいわ。レベル高すぎ。見て、あの"ウェーブ"だって、ステップを踏みつつ頭にまで揺らすなんて……簡単にはできないものよ。しかもその動きを揃えるなど、神業よ」
委員長、大絶賛。
「すご……不規則にリズムが止ると、あのふたりもぴたりと動きが止るし。緩やかになれば動きがゆっくりになるし……。早い律動にあれだけぴったり合わせて動けるって、あのふたりなにものなのかしら!!」
委員長の興奮まじりの声に、あたしは内心鼻高々だった。
"すごいでしょう、あたしの帝王と王子は"
そう独占欲丸出しにて言ってみたいのをぐっと堪える。
あまりにサプライズ過ぎる素晴らしい贈り物を貰った気がする。
格好いいダンスを披露したふたりに、ぞくぞく興奮がとまらない。