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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
 

 優雅な中華風の曲と衣装が、ふたりに気品さを植え付けている。

 あのふたりの美貌は、決して廃れたようなアンダーグラウンド的なものではない。

 ハル兄はなんといっても広大なサバンナの帝王で、ナツは夢を与える優美な王子様なのだ。


 だからこそ特別製の衣装は、彼らの非日常性を高めて、見ているこちらの方も興奮してくるんだ。


 これはだれの演出なんだろう。

 
 顔の向きも目線の向きまで同じ。

 複雑なステップも一致して、滑らかなその動きは素人には思えない。
 

 どうしてあんなに同じ動きができるのだろう。


 根本の卑猥さは酷似しているとはいえ、ナツとハル兄の個性は全く違う。

 あれは互いの個性を知り尽くしているからこそできる神業なのか。


 あたし、佐伯家兄弟のことをよく知っている気でいたけれど、あそこにあたしが加わったら……多分同じことは出来ない。

 あたしの相容れぬ領域があの兄弟にはある――。


 そう思えば寂しくなるけれど、本当にふたりは嬉しそうだから。

 本当に楽しそうな笑顔を見せ合うから。


 だからあたしまで嬉しくなる。

 ちっぽけな疎外感なんてどうでもいい。


 この兄弟は、本当に互いが大好きなんだね。

 17歳の差……下手すりゃ親子ほどの年の差があるというのに、このふたりは互いが対等で互いを認め合っている。


 それって、なんて素晴らしいことだろう!!

 羨ましいったらありゃしない。


 演者の楽しさは観客に伝染する。

 見ている誰もの顔が、嬉々としているんだ。


 すごく格好いいよ、ハル兄、ナツ。

 どちらが上と言うことではなく、ふたりだからこそ余計に輝く。

 ああ、あたしの声届くかな。


「ブラボー、ブラボーっ!!」


 たとえ4万という大群衆に埋もれても、それでもあたしは誰にも負けないほどの声援を送ってあげる。

 
「ブラボー、ブラボーっ!!」



 体が熱くてたまらない。

 兄弟のオスのフェロモンに魅了されたメスは、ただ蕩けるだけだ。


 心も体も――。


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