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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
 

 メロディーラインが流れたままでリズム隊が止れば、ふたり同じ側の手でぴたりと斜め上を指さし、反対の手を次第に左右に揺らして、リズムの出現を誘えば、足を何度もクロスさせるようにして動く。

 そんな連携命の動きでも、体の角度からしてもう、完璧複製品。

 だけどそれは誰の複製(コピー)というものではないんだ。


 あの二人に主従関係はないのだから。


 それを示すように、時折こちらの期待を裏切り、対照的な動きも見せる。

 ハル兄が光であれば影となるナツはその横で背を向けて、ナツが光になればハル兄がその横で背を向け、左右対称の動きを始めるのだ。

 かと思えば、滑るようなステップで左右の位置が入れ替わる。


 あたしはムリだ。フォーメーションが覚えきれない。ダンスが覚えられない。体が追いつかない。


 コミカルにナツの首が小刻みに動いてハル兄を見れば、にやりと笑ったハル兄はなんと片足で跳躍しながら体を前傾に倒し、回し蹴りをしているかのように開脚をしながら体を捻り、そして手を地に着けて倒立姿勢で溜まる。

 しかも長い裾が落ちてこないように、片足を曲げて裾を抑えながら。

 それを満面笑顔のナツが両手をひらひら動かし、ハル兄を盛立てる。
 

 そして今度は逆にハル兄がナツを挑発すれば、ナツが側転のように体を横から振り上げ、片手逆立ちとなる。


 ナツの足が、やはり裾が落ちないように留め、宙にぴたりと斜めに止ったままのポーズに観客から拍手が送られる。

 それをハル兄が笑いながら、さらに拍手をねだるように観客を煽り、観客達は歓声を上げて盛大な拍手を送った。


 きっとあれは、アドリブの応酬。

 場を楽しんでいる兄弟の会話なんだね。


 ナツ、ハル兄に頭撫でられて嬉しそう。


 けどね、ナッちゃん。

 いまちらりと見えちゃった。


 手首についているそれ、リストバンドじゃないよ?


 それ、あたしのおパンツ。

 神聖どころか、ご不浄のものなんだよ?


 ナツは赤いパンツを離す気はないらしい。


 それどころか――。


 ああ、ナツお願い。

 カメラさんがアップに顔を映している時に、そのパンツにちゅっちゅちゅっちゅキスして意味ありげに笑うのはよして下さい……。

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