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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
そんなあたしの慌て具合は露知らず、高揚した顔に妖艶さを漂わせ、流し目にてキス顔をドアップにさせれば、ハル兄もフェロモンを迸らせて斜め45度の濡れた目線で殺しにかかる。
悪ノリ兄弟に悶絶者続出。
盛り上がりは最高潮。
曲のサビに入れば、ふたりが再び同じ動きを見せ、振り乱した髪から汗を滴らせて踊り狂う。
そして――突然ふたりの背景が変わった。
それは……。
「あれは、警官がいた場所じゃない!? ほら、あの看板……っ」
委員長の言う通りだ。
そして画面には、演出とは思えないほどの観客に囲まれている様が映し出されていた。
もしかしてこれが正解の画面で、ふたりは今、あの場所で踊っているの?
それをこの画面で中継していたの?
その時、「やべ」という声を、どこかのマイクが拾った。
この声……あの兄弟ではなく。
「モモちゃん……?」
「ねぇ見て。あの上のところにも……走るピンクのウサギがいるわよ」
委員長の示したところには、観客席とは違う……照明が薄くついた小部屋があるようで、そこでメガネをかけたピンクのウサギが走っていた。
「いやだわ、あんな高い場所にまで菌が飛び散ったのね」
「委員長、あれはきっと"もみょウサギ"だわ」
「なにそれ。あ、彼の後ろに……警備員? あら、追いかけているの? どんな卑猥なことをしでかしたのかしら」
ピュチェリーボーイであるモモちゃんに限って、痴漢行為はしていないだろう。だとすれば考えられることは――。
もしや。
機械いじり大好き高IQのモモちゃんの暗躍で、この画面にて、離れた場所にいながらも、本当にここのステージに立っているような臨場感溢れる演出ができたのではなかろうか。
しかもきっと、照明係も兼任くらいして。
そしてきっと、電波ジャックしたのが気づかれて、"脱兎"の勢いで逃げているんだ。
なんだか裏方のモモちゃんが一番大変そうに思うけれど、それでもハル兄とナツ大好きな佐伯家の執事としては、好意的に協力したのだろう。
頑張れ、モモちゃん。
そのモモ色お耳、似合ってるよ。
今度ゆっくり見せてね。