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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
 


 それから数日後――。


 ライブ敢行時に観客がすべていなくなるという、芸能史上初になるだろう、前代未聞の醜態をさらしたSeason。

 そう至らしめたのは、スタッフの不手際だと強気に出て顰蹙を買ったHaruの、それまでの素行の悪さがネット上に明るみになり、Haru人気は猛速度で急落した。

 同時期、恐喝や傷害、麻薬取締法違反……たくさんの罪で逮捕されたあるヤクザと、Haruとの長年に渡る付き合いが新聞社にスッパ抜かれ、警察が介入する前に、事務所はHaruを解雇したらしい。

 その新聞社のスクープは、ある匿名者からのリークだという。それは、Haruの悪行三昧に疲れ果てた事務所内部からの密告とも囁かれているが、リーク者が誰なのかいまだ不明である。


 そしてSeasonは、残り3人が新たなるボーカル相楽遙人という若者を迎えて、生まれ変わった。

 ユニット名は、"Lapin"。

 フランス語でウサギという意味らしい。

 4人は知り合いだったらしく、再会して同じユニットになったのを泣いて喜んでいたという。


 なにより、相楽遙人の曲作りのセンスと歌声は、身震いするほどすごかった。


 なぜHaruの歌声に夢中になれていたのかわからない。

 なぜ芸能プロダクションが、彼ではなく……整形した"山田権太"(ネットでそう書かれていた)をリーダーに据えていたのかわからない。


 本当の美声というものは、静かに落ち着いた心地で聞けるものだと言うことが初めてわかった。


 "相楽遙人のファンになった"


 あたしがハル兄とナツにそう宣言すると、ふたりは意外にも柔らかな笑みを浮かべて、賛同してくれた。

 Haruの時は、思いきり敵対心を剥きだしてしていたのに。



「よ~し、波瑠兄。今度……サクラも連れて、ライブに行こうね」

「チケットはサガラに手配させるか。まぁ、なんだかすげぇ義理堅そうなあいつのことだ。こっちから言う前に送ってきそうだがな」


 そのハル兄の予言通り、話題の人気ユニットのライブチケットが、TOPアイドルに君臨した本人自らの手で、郵送されてくることは……この時のあたしは知り得なかった。

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