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【SS】目が覚めたら…?
第9章 【2000拍手突破感謝】Ⅳ.憂鬱の向こう側
まぁ、そんな(宣伝に)必死なウサギの力添えと、
「別にいいじゃないか」
「そうだ、お金とってるわけじゃないし」
「聞きたいものを聞くのがいけないこと?」
さらには、相楽遙人の歌声と佐伯兄弟のダンスの続行を渇望する群衆が、業務妨害と訴えることこそ、表現及び言論の自由の妨害だと騒ぎ立て、
「だったら、場所を変えろ。もっともっと大きい場所で」
そんなピンクウサギの粋な計らいにて、近くの公園の野外設備を借り、20分限定ということで催しがされたのだった。
それが、いつも歌声と曲を披露する場と機会を失い続けてきた、不遇の相楽遙人念願のライブであったということも知らず。
急遽取り決められた割には、現われたモモちゃんが持っているノート型パソコンから、すんなり手際よく流れる相楽遙人自作の音楽やら、持参していたらしいアンプの存在まで、用意周到すぎていたことの意味も知らず。
……ウサギのスマホにはなくなっていたはずの、あたしが着た記憶がない……着物姿のあたしが看板娘になった【宇佐木呉服店】巨大ポスターが貼られた立て看板があったことも知らず。
その存在を知らずにいたウサギが、作成者たる…機械と画像編集に強いモモちゃんを揉みくしゃにするようにして歓喜に飛び跳ね、そんな適度な運動をしたせいか…またトイレに駆け込んでいたことも知らず。
そして。
HaruやSeasonへの興味も未練も、微塵にもなくなってしまっている……薄情なまでの自分の心も知らず。
魅了してやまない相楽遙人の歌声と、ハル兄とナツのパフォーマンスへの期待が心を占め、観客全員一致団結して熱いコールを送った。
それはSeasonにも負けないほどの大規模の声援。
緊張した面持ちでステージに立った相楽遙人が、向けられる熱視線に呆然唖然として、そして……数秒間嗚咽を漏らしたのが印象的だった。