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【SS】目が覚めたら…?
第15章 【アンケ感謝】藤見さま☆『艶事談義』
「ねぇ……フジミさんの言う『ヤナセ藩で、いい殿方を物色出来る団子茶屋』ってどこだろう」
ナツは手にした「住所」を見て首を傾げました。
「また随分と曖昧な住所だな。団子茶屋……? 出会い茶屋の間違いじゃねぇのか?」
「え、フジミさん……出会い茶屋勤務? 経営? 清掃? それともVIP客?」
出会い茶屋とは逢引きを愉しむ場所……今で言うラブホです。
男女が愛の逢瀬を楽しむ貸座敷。
ふたりにかかれば、喫茶店もいかがわしいラブホに早変わり。
なんとかこの奏多、作者の意地を見せて、あさっての方向に進みそうな話の流れを矯正しました。
「しかしこの辺、街道沿いでもないのに、わざとらしいほど茶屋ばかりだよね。一体どこにフジミさんが……」
「そこら辺の奴に聞いてみるか。おい、そこら辺の。そうお前だ。ここに『ヤナセ藩で、いい殿方を……』って、まだ俺様がいい終らないのに、なぜ逃げる!」
「きゃ~。ひと攫い~」
若い女の子は逃げていきました。
「失敬な!」
「本当にね!」
兄弟はお口を尖らせています。
無理ないでしょう、ヤ○ザなハルが肩に女の子担いでいれば。
「なぁ、ナツ」
ハルがナツの名前を呼んだ時でした。
「なぁに~?」
屈託なく笑う可愛さ丸出しの若い男性が近づいて来たのは。
彼は手にチラシらしきものを持っていました。
「なんだお前は。俺はナツを」
「だから俺がな~に?」
少しの沈黙の後、ナツが口を開きました。
「君は……ナツ?」
「うん」
「僕もナツ」
「うん?」
そしてふたりは見つめ合い、深々とお辞儀をしあってます。
「はじめまして、ナツと言います。こちらは僕の兄の波瑠と、その肩に居るのは僕の大事なしーちゃんです」
……おい、私はどうした!
「はじめまして、ナツです。恐らく俺は君より年上ですが、気になさらず普通の口調でお願いします。……君達ヤナセ藩は初めて?」
「そうなんだ。で、いい殿方がいる団子茶屋っていうのを探しているんだけど……」
ナツ同士、なにやら和やかに打ち解けたようですが。