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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
そしてハル兄は鏡台を取り出してきた。
そこには……大人っぽいあたしが立っていた。
ナツの着物は清純派だったけれど、ハル兄の着物は婀娜っぽい。
色っぽい女と……思ってくれるのなら嬉しいけれど。
「それは……成人式に、お前に着せたかったんだ。それまでに目覚めればいいなと、お前が18の時には既に用意していたものだ」
ハル兄の目は優しかった。
「もう成人式は過ぎてしまったけれど。だけど……こうしてお前が生きて動いてこうして俺の選んだ振り袖を着てくれたのなら、今までしつこく持っていて……よかったと思う」
「ハル兄……」
「ナツには悪いが、俺は……お前が目覚めた新しい年の最初の日に、お前にこれを着て貰いたかった……。お前と年を迎えられたことが、夢ではない証拠に……したかったんだ」
あたしの後ろに回ったハル兄が、鏡の中であたしを後ろから抱きしめていた。
「すげぇ綺麗だ、シズ」
吐息のような甘い声に心が震えた。
「俺を惑わせる……大人の女だ」
ハル兄の熱い舌があたしの耳をなぶる。
「シズ……」
熱に浮かされたような艶めいた声が鼓膜を震わす。
「俺の静流―――」
ああ、そんな切ない声を出さないで。
あたしの心が……震えてしまうよ。
そしてハル兄の手は、結んだばかりの帯を解き始めた。
「え、せっかくの着物……」
「オトコが女に服を着せたいのは、脱がせたいからせがむんだよ」
耳の穴に舌を差し込みながら、鏡の中のハル兄は挑発的な眼差しであたしを見ていた。
「だが……裸にはさせねぇよ。脱がしたら、せっかく日の目を見たばかりの着物さんが可哀想だ」
帝王の慈愛精神の対象範囲は、かなり広いらしい。
「だから着物さんが喜んで貰えるように、着物プレイの始まりだ」
「え?」
そしてハル兄は襟を大きく左右に開いたのだった。
まるで予告なく突然に。