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【SS】目が覚めたら…?
第1章 お正月に目覚めたら。
ひつじ年が始まりました。
あたし……シズルは、大晦日から佐伯家にお呼ばれして、お正月を過ごしています。
「新年、あけましておめでとうございます。しーちゃんと過ごすお正月のために、しーちゃんが目覚める前から僕が作って用意していたものです。どうか今日のお召し物はこちらでお願い致します」
元旦朝一番――。
内からかけていた鍵などなんのその、目覚めたら……あたしが寝ているベッドの下で、ナツが両手をついて頭を下げ、畏まっていた。
何事かと思いつつもまだ半惚け状態のあたしは、言われるがままされるがままにパジャマを剥かれ、そして当然のようにおイタをされ……少しばかりいい気分で微睡んでいた頃に、佐伯ママが乱入して、ナツを部屋から追い出して着せてくれた。
即ち――。
ナツが仕立てたという、赤い振り袖を。
「これはね……ナツが生地を裁つところから始めて、お裁縫していちから仕立てたの。可愛い赤がシズルちゃんに似合うって……。ふふふ、ナツの見立て通り……すごく似合うわよ?」
そしておばさまは言った。
「今日は…ナツの花嫁修業の成果を見てちょうだいね」
そして、連れられた部屋――。
数時間前までは普通の家の居間だった空間が、雅な趣に彩られていた。
まるで高級旅館のロビーみたいだ。
ぶたさんの貯金箱が置かれていたはずのスペースには、花瓶にみたてた粋な竹筒に活けられた、静謐さを掻き立てながらも躍動感がある生け花。
花や枝の反り具合を見越して構成された配置は絶妙で、美術を3以上取ったことがないあたしとしては、目から鱗の美のセンス。
大和心などわからぬあたしですら、日本ブラボーと叫びたくなる、平凡や卑猥や変態とは無縁な……風流あるお花の活け方だった。
かかるBGMは、流麗なお琴。
CDでも流していたかと思いきや、開放式の和室で、ナツが琴を弾いていた。自演だったらしい。
……どうやら、琴だけではなく華道もナツの「花嫁修業成果」のようだ。
どこまで完璧な大和撫子の嫁を目指す気だったのだろう。