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【SS】目が覚めたら…?
第1章 お正月に目覚めたら。
お琴が止ったと思いきや、ナツがじっとあたし見ていた。
紅潮した顔で、目をうるうるさせている。
「し、しーちゃん……っ、着物……僕の作った着物姿のしーちゃんっ、綺麗で……ああどうしよう、僕っ」
そして飛び跳ねるようにして、両手を拡げてあたしに抱きついてきた。
「僕たまらない。その赤い裾を開いて、下のお口に僕のを思いきり挿れて、しーちゃんを乱れさせたい。しーちゃん、部屋に行こう?」
……妖艶な顔の王子様は、変態発言をして駄々をこね始めた。
「婚前交渉は許しません。まずはシズルちゃんに、嫁として合格点貰うことから始めなさいっ!! そのために頑張ってきたんでしょう!?」
息子を嫁に出していいのか、おばさま。
「……わかった」
納得するのか、息子。
欲望に満ちた自称「嫁候補」は、冬場は椅子で座れるこたつとなった食卓にあたしを座らせれば、向かい側でハル兄が黙々と拡げられたタラバガニの足を毟り取って豪快に食いついていた。
「い、いたのわからなかった。あけましておめでとう、ハル兄」
「………」
「ハル兄?」
「ん」
すべての挨拶が「ん」に集結されたらしい。
不機嫌そうだ。
めでたい年の始まりに、なんで顰めっ面ででかいタラバの足を貪っているんだ、サバンナの帝王。帝王は海にも進出したのか。
おいしそうなタラバの恩恵にあたしもあずかろうと手を伸ばしたら、空になったカニの足の硬い殻にて、手の甲をペンペンと思いきり叩かれた。
昨夜、病院帰りで疲れていた方が上機嫌だったというのに、なんで目覚めたらこんなに不機嫌なんだか。
しかもタチが悪いのは、あたしを責めているような目を寄越すことだ。
あたしにはまったく覚えがない。
大晦日の夜伽、呼ばれていたとか?
いや、違う。
一体なんだろう。
今さら聞けるような空気でもないし、さてこの帝王様をどうお慰めすべきか。
「シズルちゃん、おめでとう……」
「うわっ、なんだおじさまか。あけましておめでとうございます」
新年早々、どっきりさせられた。
いるならいるとアピールをして欲しい。
「してたんだけどね……」
おじさまの呟きは空気に溶けた。