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【SS】目が覚めたら…?
第18章 ハルへのエイプリルフール
 

 12年後に目覚めたあたしは、騙されるだけの女ではない。

 寝てただけと言われようが、成長したのは胸や髪だけではないんだ。


 今度はあたしが、ハル兄を騙してやろう。


 ハル兄の一喜一憂する姿を見て、ほくそ笑んでやろう。

 そして最後に笑っていってやるんだ。


 "エイプリルフール"って。


 だけど、ハル兄が夢中になるほど楽しいものってあるのだろうか。

 さすがに高級外車に10玉で傷つけて"エイプリルフール"なんて笑って言ったら、シャレにならないだろうし。絶対、車さんの気持ちになれと、あたしの体になにかされそうだ。


 形に残らず、ハル兄の気分だけを上昇&下降できるものとは、はて?



 ナツに聞いてみようか。

 さすがに、エイプリルフールだからハル兄をやり込めたいと告げたら、お兄ちゃん大好きっ子はしくしくしだしそうだから、内緒にしよう。






 そして――。


 あたしは覚悟を決めて、コンビニにタバコを買いに出かけたハル兄を追いかけていった。



「なんだ? 買い物あるのなら、一緒に買ってきてやるぞ?」


 朝から気怠げに最後の一本だというタバコを吸い、ハル兄は額に垂れ下がる長くなった前髪を片手で掻き上げた。

 第三ボタンまで開けた黒いシャツから除く逞しい胸板といい、なんでこのひとはここまでフェロモン全開なんだか。


「買い物……っていうか、ちょっとハル兄に用があって。あたしも一緒に行きたい」

「……? ああ、別にいいが……」


 そして、てくてくとハル兄とお散歩。


「………」

「………」


「………」

「………」


「………」

「……おい、言いたいことがあるのなら早く言え」


 沈黙を破ったのはハル兄で、いつの間にやら吸っていたタバコは短くなっていた。


「ハル兄」


 よし、作戦実行。

 あたしなりに考えた、迫真の演技を見よ!!




「あたし、LOVEの方でハル兄が……す、すす好き」



 緊張しすぎて、声が震えてしまった。




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