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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
「ハル兄……遠くにいるみたいで、寂しいよぅ……」
「……余裕ねぇんだよ」
ぼそりとハル兄が言った。
濡れた唇があまりに卑猥だった。
「その着物、やっぱ着せなきゃよかった」
そう苦笑しながら、ハル兄は服を脱ぎ始めた。
「遠く思うなら、近くに行ってやる。だから心配するな。俺はいつもお前の傍にいるから」
見えていく褐色の逞しい胸。
鏡の中には、男らしい背中が映っている。
ああ。
現実と鏡は表裏一体。
今まで何度かハル兄と肌を重ね合わせてはきたけれど、常にどちらか一方のハル兄しか見られなかった。
あたしはハル兄のすべてを見ていない。
見ることは叶わない。
それが悲しかった。
「ハル兄を早く感じたい……」
片面ではなく、両面全て。
あたしの世界がハル兄に染まって欲しい。
「……それは俺の台詞だ、シズ」
全裸になったハル兄はオスのフェロモンを強烈に放ち、妖艶で。
裸のままでハル兄はあたしを手を取ると、畳に自分の服を並べてその上にあたしを寝かした。
「お前のすべてが、俺に染まればいいのにと思う」
憂いを含んだ黒い瞳。
見下ろすハル兄の眼差しが切なくて。
「境界なくすべてを溶け合わせて、そのままひとつになりてぇよ。そうすれば……遠いなんて思わせねぇのに」
その切ないままで笑うんだ。
「俺達が男と女で生まれたのは意味があると思わねぇか?」
ハル兄が静かにあたしの上に体を落としてくる。
ようやく触れられた直の熱い肌。
ハル兄の雄々しい匂い。
体を疼かせるハル兄を感じ取れて、あたしは嬉しくなってぎゅっと抱きついた。
ハル兄もまたあたしを抱きしめて、あたしの頭にキスを落としてくる。
「男と女だから求め合える。繋ぐことができる。……体も、心も」
温かで大きな手が、あたしの前髪を掻き上げた。
熱に潤んだ黒い瞳に魅せられ、そしてその唇に吸い込まれたあたしは、自分からハル兄の唇を求めて重ね合わせた。
離れれば寂しい。
こんなに近くにいても、完全に繋がらない体は不満を募らせる。
だから幾度離れても、あたし達の唇は自然と重なり合う。
それが決められていた理(ことわり)かのように――。