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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

「痛い、痛いっ!!」



 泣きながら、無我夢中で走る。

 途中ドレスの裾を踏みつけ躓いて転び、頬にも手にも傷を作ってしまう。

 羽ばたきが間近に迫ったのを知り、ドレスを短く破ってあたしは走った。だが、転んだ拍子に挫いたらしい足首が、痛みに脈打ってうまく走れない。


 城の中でのうのうと暮らしていたあたしが、初めて感じる危機感は、城の中で感じた"殺される"という予感と同じもので。

 城の外が安全なわけではなかった。


 バサバサバサ……。


 大きな鳥の翼が視界に入る。

 その険しい爪があたしの目を――。



 ピィィィィ……。



 その時だった。

 口笛のような甲高い音が響いたと思うと、その鳥は飛び去った。


 あたしは息を乱しながら、その場に崩れ落ちてそこから動けない。

 腫れた足がずきずきして、燃えるように熱い。


 なんだったのだろう。

 あたしは助かったのだろうか――。



「おい」



 突如響いたその声は、低いながらも艶があり、威圧的だった。


「おい、そこの世間知らずな女」


 不遜にも思えるその声が向けられているのがあたしだとわかり、その声を方向を振り返って見れば――。


「――っ」


 思わず、息を飲んだ。


 切れ長の目。通った鼻梁、煙草を咥える肉厚な唇。

 浅黒い肌と漆黒色の髪と瞳を持つ、長身で野性的な美貌を持つ男が立っていた。
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