この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
野獣のような険しさを持ちながら、どこか憂いを帯びた……熟した男だけが持ち得る危険な香り。
なにより纏う空気が圧倒的で、条件反射的に思わず平伏したくなってくるほどだ。
上半身には、気持ちよさそうな…袖無き毛皮を羽織っただけでほぼ裸。覗く肌はどこも筋肉が盛上がり、鍛えられた体の持ち主であることがよくわかる。
城にいた侍従のような、中性的な優男タイプではない。今まで見たこともない、どこまでも"男"を感じさせる男に、変な警戒心が芽生えてしまう。
手には猟銃、そして肩には――。
「こいつがお前を、獲物となる小動物と勘違いしてしまったようだ」
男の声に呼応したように羽を広げるその鳥は、多分……鷹。
獲物を狩るようなその険しい目が男そっくりで、本能的恐怖にぞくりとするが、男はお構いなしにあたしに近寄ってくる。
「大丈夫か……って、怪我させちまったな。腫れてる……捻ったか?」
男が傍に来て屈み込み、あたしの足首に触れた。
「痛っ!! さ、触らないでっ!!」
お父様に組み敷かれて以来、あたしは男に触れられるのが恐い。
しかもこの男は、初対面だというのに無遠慮に、距離を詰めるから。
男は不機嫌そうに顰めっ面をして、そしてなんと……。
「ちょ、ちょっと離して、離してよっ!!」
「うるさい。特別に治療してやる。だからお前は人の好意をありがたく受けて、俺様に平伏して崇め称えよ」
と、よくわからない一方的すぎることを押しつけ、あたしをひょいと肩に担ぐと、ずんずんと慣れた足取りで歩き始めたのだ。
「嫌だ、離してぇぇっ!!」
「却下。俺様を、治療を名目にした人さらいのように言うな」
「そのままじゃないっ!!」
「俺様はどう見ても心優しい猟師さんだ。お前が悪いのは目か、頭か」
なんなんだ、この男。
逃げ出したくても、男の強い手が離さない。
横には、あの忌々しい鷲があたしを見張っている。
あたしは、どうなるのか。
売られるのか、殺されるのか、食われてしまうのか。
城の外の世界は――。
人がいれば安全というわけではなかった。