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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

 野獣のような険しさを持ちながら、どこか憂いを帯びた……熟した男だけが持ち得る危険な香り。

 なにより纏う空気が圧倒的で、条件反射的に思わず平伏したくなってくるほどだ。

 上半身には、気持ちよさそうな…袖無き毛皮を羽織っただけでほぼ裸。覗く肌はどこも筋肉が盛上がり、鍛えられた体の持ち主であることがよくわかる。


 城にいた侍従のような、中性的な優男タイプではない。今まで見たこともない、どこまでも"男"を感じさせる男に、変な警戒心が芽生えてしまう。

 
 手には猟銃、そして肩には――。


「こいつがお前を、獲物となる小動物と勘違いしてしまったようだ」



 男の声に呼応したように羽を広げるその鳥は、多分……鷹。
  
 獲物を狩るようなその険しい目が男そっくりで、本能的恐怖にぞくりとするが、男はお構いなしにあたしに近寄ってくる。



「大丈夫か……って、怪我させちまったな。腫れてる……捻ったか?」


 男が傍に来て屈み込み、あたしの足首に触れた。


「痛っ!! さ、触らないでっ!!」


 お父様に組み敷かれて以来、あたしは男に触れられるのが恐い。

 しかもこの男は、初対面だというのに無遠慮に、距離を詰めるから。


 男は不機嫌そうに顰めっ面をして、そしてなんと……。


「ちょ、ちょっと離して、離してよっ!!」

「うるさい。特別に治療してやる。だからお前は人の好意をありがたく受けて、俺様に平伏して崇め称えよ」


 と、よくわからない一方的すぎることを押しつけ、あたしをひょいと肩に担ぐと、ずんずんと慣れた足取りで歩き始めたのだ。


「嫌だ、離してぇぇっ!!」

「却下。俺様を、治療を名目にした人さらいのように言うな」

「そのままじゃないっ!!」

「俺様はどう見ても心優しい猟師さんだ。お前が悪いのは目か、頭か」


 なんなんだ、この男。


 逃げ出したくても、男の強い手が離さない。

 横には、あの忌々しい鷲があたしを見張っている。


 あたしは、どうなるのか。

 売られるのか、殺されるのか、食われてしまうのか。



 城の外の世界は――。

 人がいれば安全というわけではなかった。

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