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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
帝王様は意外になんでも出来る多才な人で、なにより銃の腕もかなりのもの。ナツと狩りに出たら、必ず収穫物は大量。時にクマも平気でとってくる。
料理ができるくせに作らず、肉塊までさばいて材料を放り投げては味付けなど調理はあたしに丸投げだ。そして悪戦苦闘しているあたしを、愉快そうに煙草をふかせて見ていながら、ひたすら自分好みの味付けだけを主張する。あたしの好みなどまるで考えていない。
とにかく「俺様の健康を第一に考え、"塩味"を強くするな」が口癖だ。そこまでうるさく言うのなら、自分で作ればいいのに、
――お前は、オトコゴコロを理解できない奴だな。
この男の心など理解したくもないのが真情だが、それでもおいしくできた時に褒められれば嬉しくなる。……あたしもかなり単純構造をしていたらしい。
あたしは歩けない怪我人で居候させて貰っている身分だから、この男の素材にとやかくいう権利はないとは思うが、どうして動かない野菜をとってこないのか不思議だ。
いつもいつも肉ばかり。不満を言えば、
――お前の贅沢な腹の肉になりたいと名乗り出てくれているお肉さんに悪いと思わないのか!!
誰が"贅肉"になってくれてありがとうなどと感謝するのか。
だが男は変なところが真面目な上、食べ方も実に綺麗で、その他色々礼儀作法を身につけているようだ。がさつなら反論もできようが、王女のあたしよりも礼法がなっているのなら、あたしはなにも言えない。
完全肉食男につられるように、城では肉はあまり食べなかったあたしもまた、気づけば男に言われるがまま、肉食へと変貌していった。
そして、小食だったあたしがお肉をぺろりと平らげるようになれば、その空になった皿を見て嬉しそうに呟くんだ。
――よしよし、抱き心地がよくなってきた。
帝王様は、あたしを抱き枕にしてお休みになる。そのためにあたしは太らされているらしい。家畜化するなどなんたる鬼畜。
そのうちあたしも肉鍋にされてしまうのではないかと、密やかに戦々恐々だが、逃げるのは許されない。猟師の捕獲技術は一流だ。