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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
「いいか、絶対小屋の中にいろよ?」
あたしが歩くことができるようになった頃、ハルは必ずあたしにそう言って出かけた。
最近、ハルの顔が強ばっている。
キスをするどころか、あたしを抱き枕にもしないし、ドレスも買ってこない。会話がなくなったというより、外出している時間の方が多くなった。
あたしが寝ている間に、血に塗れた服と取った動物の屍だけ残して、また出かけることもしばしば。
やがてしとめた獲物の姿はなくなり、野菜という名の雑草が置かれるようになり、ハルが戻って来ても会話らしい会話がなくなって、関係が最初よりよそよそしくなった。
今までが贅沢すぎ、ぞんざいに扱われていると思う…今の状況が、居候の身として普通なのかもしれないと思うのだけれど、以前となにかが違うと、違和感を感じることも多くなった。
獲物がないのに、使われた形跡があるハルの猟銃。
単純に連日、獲物を仕留め損ねているだけなのか。
ハルは、猟師だけを稼業にしているのだろうか――。
最近、ふと思うようになったハルへの疑問。
なぜハルが猟師として山の中に閉じ籠もっているのか、不思議でたまらない。自由奔放の野性的な男に、こんな狩猟生活は似合わない。
それに大体、ドレスを買うだけの余裕は、ないように思えるのだ。
そして――。
最近、気になり始めた、ハルから匂う香水。
ハル自身は、井戸水をかけて匂いを消しているようだったが、この香りは特殊で癖が強く。お母様が好んで身につけていたものと同じで、貴族の間でも流行の希少価値の高いものだと、前に侍従から聞いたことがある。
あたしには爪先立ちしてみても、届かない……妖艶な女の匂い。
ねぇ、ハル。
あたしのいないところでなにをしているの?
……恋人が、いるの?
疲れた顔で帰ってきたハルに、冗談っぽく聞いたことがある。
だがハルはあたしに詰るような冷たい目をして、答えをくれなかった。
ハルが女と会っているのではないか。
そう思うようになってから、あたしは心がちりちりと焦げ付くような痛みを感じて、ハルの傍にいるのが息苦しくなった。
ハルのふとした思案顔に、あたしをどうやってここから追い出そうかと考えているような気がして。