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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
実際、怪我がよくなり始めたら、ハルが触れてくるのがなくなった。キスをこちらから仕掛けても、すっと顔をそむけるようになった。
ふてぶてしいながらも明確に存在していた"表情"がなくなり、いつもあたしを拒むような冷ややかさを纏う、仏頂面のままで。
――なぁ、シズ。
うっとうしくさえ思った、あの頃がやけに懐かしい。
今はきっと。あの頃の情熱はハルの中には一切無いのだろう。
あたしは、ハルの重荷になっているのではないか。
だから線を引いたように、あたしを遠ざけ始めたのではないか。
ハルはあたしを手当をしてくれただけで、ここに永住許可はしていない。あたしが怪我がよくなっても出て行きたくないだけで、まだ痛いとずるずるとここにいるだけ。
あたしは、ここに居てはいけない。
ハルに煙たがられている……。
あたしが先を許さなかったから?
だからハルは、満足させてくれる女を選んだの?
だからあたしは疎まれてしまったの?
女として、やはりあたしは未熟だったんだ――。
……これ以上、惨めな自分を自覚したくなかった。
その日――。
「いいか、シズ。何度も言っているように」
出かけ際にハルはやけにしつこく言ってきた。
「わかっているよ、ハル。いつも本当に心配してくれてありがとうね」
話しかけてくれるのが嬉しくて。
構って貰えるのが嬉しくて。
きっとあたしはいつも以上に上機嫌だったろう。
だけど――。
「わかっているならいいが。それとシズ、帰ったら話がある」
その真剣な顔は、あたしの心を抉った。
ハルの覚悟めいた、迫力のようなものを感じ取ったから。
ああ、もう潮時だ。
とうとう"その時"が来たのだと、あたしは思った。
あたし、今日……追い出されるんだ。
わざと足を痛そうに引きずっているのを、きっと見破られた。
だったらその前に――。