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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
ひとつひとつに、ハルの優しさを感じる。
ひとつひとつが、愛おしい。
ああ、あたし馬鹿だ。
今頃気づくなんて。
あたし、ハルが――好きだったんだ。
王女ではなく、シズと呼ぶ……ひとりの女として扱ってくれたあの、簡単には懐柔できない、面倒この上ない男が。
――シズ。
あの声で呼ばれるのが好きだった。
笑顔を見ると、たまらなく嬉しくなった。
ハルとするキスが好きだった。
本当は、ハルに抱かれたかった。
体は正直だったのに、心は愚鈍で。
ああ、ハルに女の影がない前に自分の心に気づけばよかった。
だけどなにかが変わっただろうか。
……否、きっとなにも変わらない。
ハルは傍にいたから、あたしを抱こうとしてくれたのだろう。
あたしより魅力的な女なんて、沢山いる。
そして現実、ハルはそういう女を見つけたのだから。
ハルが愛する女はどんなひとなんだろう。
少なくとも、もう王女にはなれない…こんなみすぼらしい貧相な小娘よりは、余程抱き心地がいい美女のはずだ。連れていて自慢になるはずだ。
ハルに疎まれたくない。
好きだからこそ、せめて去り際は潔く。
あたしを助けてくれたことに感謝して、それ以上を望むのはやめよう。
あたしは、ハルのわかりにくい愛情を、あたしだけに与えられていると勘違いして意識してしまっただけなのだから。
さようなら。
さようなら。
初めて好きになったひと。
あたしに愛と温もりを教えてくれてありがとう。
さようなら。
さようなら。
どうか、いつまでもお元気で。
愛するひとと、お幸せに――。