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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
俺は、ナツを人殺しにも、女王の"道具"にもさせたくない。だからナツが呪いという選択肢を選んだのは、俺との約束を信用してのことだ。
ナツにかけられた呪いは残酷なものだった。
俺が勝手にしでかしたことで、人前に出られない体になったナツは、それでも笑って言うんだ。
――波瑠兄を信じている。それまで僕は、森でひっそり暮らすから。
ナツとの連絡は、弟と同じ名前の鷹にさせていた。
女王がかけた呪いを解くには、どうやら女王を殺すしかないらしい。
だが女王には安易に近づけない、なにかの力に取り巻かれている。
……城だ。
多分城が女王の護りの砦。
女王を引きずり出すには、どうすればいい……?
そんな中、不穏な噂を聞いた。
17歳のシズの誕生日に、女王がシズを殺そうとしていると――。
俺が動くより早く、お前は城から逃げ出した。
それにご立腹のあの女は、俺に伝令を出した。
"逃げた白雪の生き肝を持ってこい"
これが俺に課せられた命令。
さらにそれが失敗した場合、ナツの呪いが深まり命が危なくなるらしい。
俺がシズとナツを追いつめてどうする?
幸いにも女王は、俺の愛情の度合いがシズよりナツに向いていると思っている。そう仕向けたのは俺だ。だから今までシズに会いたいのを我慢していたんだ。すべては、こうなることを予期していたために。
俺は鷹を使い必死にシズを探し、そしてようやく見つけた。
会いたくて仕方が無かった、愛しいお前を――。
久しぶりに間近で見るシズは痩せて、痛々しい様子だった。
だけど、俺の記憶同様に、お前は綺麗で――。
時と共に俺の凍えていた鼓動が、お前によって熱く動き出したんだ。
俺はシズを匿い、しとめた動物の生き肝をあの女に届けた。
後日俺は、女王の情夫であり、俺の情報屋でもある奴に、女王の様子を聞いてみた。
女王は、生き肝を手で掴んで、生でうまそうに食ったそうだ。
……ああ、見ていなくてよかった。
そいつはしばらく肉が食べられないと嘆いていた。
娘の肝だと思って食らう母には反吐が出たが、それでも褒美で貰える金で、シズのドレスが買えるのが嬉しい。
残った肉は、痩せ細ったシズの栄養にもなる。一石二鳥だった。