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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
やがてあの女は、生き肝だけではなく、それ以外の部位も食べたいと言いだし、その都度俺は捕獲した動物の一部を持参した。
女王はそのどれもをたいらげて満足気だったようだ。
日数が経っても鮮度がいいということに疑問を持たなかったのは、情報屋が動いて調理したものを食わせてくれたからだろう。
だが生であれ加熱調理されて味付けされているものであれ、実の娘の肉だとの認識の下で、何度も食らいたいと思えるその残酷さに、さすがの俺も気分が悪くなる。
ただ女王の美しさは、ここ数日で、見る見る間に翳ったらしい。寵愛を受けた男達の姿がないのは、シズの方に心変わりした男達を、彼女が殺したとか。なんとか生延びた情報屋も、疎かにしていた本業に戻るらしい。
愛がなければ朽ちる淫魔であるのなら、このまま放置もまた一興か。
娘を殺せば美しさが戻ると信じる愚かな淫魔に虚しい夢を与えて、そして俺は、呪いが解けたナツもシズも手に出来たのなら――。
俺は昔のように、堂々と現王女のシズを娶れる身分はない。
昔の肩書きは既に大逆罪にて廃され、今はしがないただの猟師。
しかも暗殺者なんて、自慢などできねぇだろう?
だから昔のことをシズが忘れているのなら、言わないでいようと思った。
昔、偶然お前を遠目で見たことがある。その時のお前は、昔のような活き活きとした表情は失われ、仮面を被ったように無表情だった。
それが今。
昔の記憶がない俺との生活で、ここまで生彩を取り戻せたというのなら。
なあ、ここから始めないか。
俺は猟師、お前はただの身寄りのない娘。
身分や肩書きなどなにひとつ関係ない、ただの男と女として。