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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
あたしを詰るくせに、あたしに抱きついたまま離れず、ただぶちぶちと独りごちて拗ねている。
だから聞いてみた。あたしはハル兄と一緒にイケたのはすごく気持ちよくて嬉しいけれど、ハル兄は違うのかと。
――気持ちよかったから……言ってるんだろう!? ただの性処理相手なら、こんなこと思いもしねぇよ。なんだよお前のナカ。なんであんなにする度に俺好みになってるわけ!?
そしてまたあたしは、理不尽な理由で詰られる。
その間ずっと、あたしのお腹を撫でられながら。
「この膨らみ、アキか!?」
「……ハル兄。もういっぺん、東大行き直したら?」
「だったら、ただのクソか」
あたしはこのムードぶち壊しの男の頭をぺちぺち叩く。
叩いているのに、なんで嬉しそうに笑っているんだ。
帝王は情事後のお戯れがお好きらしい。
することをしてさっさといなくなるタイプではないようだ。
まるで甘えっ子のように抱き合いたがる。触れたがる。
離れようとすると逆に引き留めようとする。
そして戯れれば幸せそうな顔で、笑うんだ。
いつもの…帝王様の毒気がない穏やかな顔で。
ハル兄は……変わったのか。
それとも元々こういう穏やかな男なのに、あたしが気づかないでいただけだったのだろうか。
抱き合えば見えてくる事象に悦びを感じながらも、抱き合わねば見えてこない現実に憂う。
体のように……心を繋げたく思う。
――なぁ……体じゃ満足しねぇんだ。なぁ静流。お前の……心をくれよ。
……ねぇ、情事後も……ハル兄はそれを望んでいますか?
情事後も、最中と同じほどにあたしを求めてくれますか?
それを聞きたいのに、言葉に出て来ない。
なにかが……決定的になるのが怖すぎて。
あたしはまだ、迫り来る不穏な足音に気づいていなかったから。