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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
 

「俺さ。お前とこうしている時間が……凄くいい」


 そんなあたしの複雑な心を知ってか知らずか、ハル兄はあたしの左手を取り、自分の頬にすりすりしながら、穏やかな笑みを浮かべた。

 なんだかその無防備なまでの表情が憎たらしく思った。


「じゃあ今度は、こうして抱き合うだけでそれ以上はなしで」


 つん、として言ってみたら、ハル兄は涙目で訴える。


「違うだろう!? だったらもっとそんな時間を作りましょう、だろ!?」


 なんだそりゃ。


 あたしが好意的ではなかったのに不服だったらしいサバンナの帝王は、なんと!!



「んぎゃっ!!」


 あたしの指に、思いきり噛みついたのだ。


 本当に、がぶりと。

 まるで容赦なく。


「痛っ、う、うわ……血、血が出てるっ!!」

「……処女みてぇなこと言うなよ。俺様はそこまで下手じゃねぇぞ」

「な、なんでそんな卑猥な発想になるの!! ほら、見てよ。見なさいよ!!」


 あたしは左手をハル兄に見せつける。

 思いきり歯形がついた哀れな薬指。


「当たり前だろ。わざと痕が残るよう噛みついたんだから」

「なんですと――っ!?」


「それくらい、意味……考えてみろよ。ま、"仮予約"ってとこだけどな」

「は?」



 ハル兄は意味ありげに笑う。



「シズ……お前に辛い選択をさせちまうかもしれねぇけど、だけど俺は引かねぇ。俺も一緒に背負ってやる。だから近いうち……」


 ハル兄はあたしの手を取り、歯形のついた指にキスを落とす。

 あたしを見遣る眼差しは、酷く真剣で……決意に満ちていた。





「お前を貰うから」










 ……to be continued…?
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