この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)


シズSide



「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 迫り来る犬の吠え声と、人の駆け足。

 
 日が傾く薄闇の世界の中、あたしは山の深層へと駆けた。


 城の中も外も、あたしの安穏出来る世界はなく。

 ひとときでも平和を感じられたのは、ハルの存在ゆえだと思い起こせば、ハルを失った心の隙間に冷たい風が通り抜け、その痛みに涙が零れる。


 隠れても隠れきれない。


「いたぞ、あっちだ!!」

「捕まえろ、姫の生首を差し出せば、女王はなんでも願いを聞き遂げてくれると約束したんだ!!」

「女王の奴隷から解放され、国に帰れるんだ!!」


 木陰にて、苦しい呼吸を整えていれば、視界に通り過ぎる人の影。


 大仰な山狩りの支度に身を包んでいる男達に、見覚えがある。

 あれは他国より"貢がれた"、美しい顔をした男達。

 
 その多くがお母様に飽きられ、今は家畜のように扱われていた…そんな男達は、あたしの命の引き替えに、人並みの幸せを約束されたのか。


 ああ、お母様。

 なんでそこまであたしを嫌うの?


 いつも子守歌を歌って添い寝してくれた、あの優しいお母様はどこに!?


 優しい思い出が砕け散り、その断片が両極にある変貌した父と母の姿へと変わる。

 恐い残骸が心に積もるのが嫌で、それを拾い集めて、元あった昔の幸せだった記憶にしたいのに、元に戻せない…決定的になにかが足りない欠片がある。

 形があるのに、認識できない……なにかの記憶の断片が。
 

 オトウサマハドウシテイナクナッタノ?

 イママデオシロデナニヲノゾンデドウスゴシテイタノ?


 いつもそれを空虚に思っていたあたし。

 だけどその部分を、ハルが埋めてくれて…あたしは、満ちたような生活を送っていたんだ。


 だからハルがいない世界は、こんなに荒んでこんなに凍えてこんなに恐ろしい――。


 ハルから貰ったドレスは、瞬く間にボロボロとなった。

 ハルとの思い出は消えていく――。

/779ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ