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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
逃げる。
逃げる。
追いかけてくる、愛おしくてたまらなかった男から。
あたしを殺そうとしていた男から。
走って転んで泥だらけになりながら、どこまでも女とは程遠い出立ちで。
何度も響く銃声。
雨の中飛び回る鷹。
あたしはハルに愛されていたわけではなかった。
油断させてあたしを殺そうとしていた、お母様の刺客。
だけどほんの少し情けをかけてあたしを助けてしまったために命が危険になり、だからきっとあたしを狙いにきたんだ。
助けなければよかったのに。
情けをかけずにいっそ早く殺してくれればよかったのに。
「ああああああああ!!」
ザァァァァァァ。
激しい雨と、段々近づく雷鳴が、あたしの慟哭と重なる。
そんな時、ずるりと足を滑らせた。
転んだ体は下方に滑り落ちる。
「きゃあああああ」
そこは崖だった。
視界も足元も悪いことに気づかずに無我夢中に走っていたあたしは、及ぶ危険が人間だけにもたらされるものではない現実に気づいた。
落ちる――っ!!
そんなあたしの手を引いて、持ち上げてくれたのは。
「大丈夫か?」
眼鏡をかけた黒髪の男だった。