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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)

  
 雨除けのフードをかぶっていて、その顔の造りはよくわからないが、あたしはただの怪しい男としか思えなくて。


「や、離して!!」

「俺は敵じゃない、シズルさん、だろう?」


 あたしは目を細めた。


 ハルもあたしのことをシズと呼んでいた。


 "シズル"


 するすると、なにかがあたしの中から解けていく。


 "シズル"



 いつの頃からか、城であたしは自分の名前が白雪だと思ってしまった。他の呼び方をする人がいないから、疑問にも思わなかった。

 なんで今まで忘れていられたの?

 あたしが、あたしたる証拠。


 お父様とお母様がつけてくれたあたしの名前は、"シズル"だ。


 今まで見えなかった記憶の断片に、風景が少し見えた気がした……。


「なんで……あたしの"名前"を?」

「お噂はかねがね」



 男は雨滴のついた眼鏡を外すと、吸い込まれそうな神秘的な黒い瞳を僅かに細めて微笑んだ後、きりりと口元を結んだ。


「ひとまず移動しましょう。俺を信用して」


 この状況、なにが決め手だったのかわからない。

 だけどあたしは、この男が信用出来ると思ってしまった。


 こくりと頷くと、男は少し顔を綻ばせた。


「よかった、ありがとう。あの大木の下に行こう。雨を凌げる」


 男はあたしの膝裏を掬うように抱き上げると、そのまま…幾分かは雨が滴る、木の葉をつけた枝を大きく拡げた大木の下に走った。
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