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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
男は自らの外套を脱ぐと、あたしに着せてくれた。
「寒くないか? ああ、こんなに…綺麗な顔が汚れて」
そして上質な服を破くと、あたしの頬を拭く。
まるで城の中での侍従のように、甲斐甲斐しい世話をしてくれる。
冷えた体に男の手は温かくて、涙が出た。
「ありがとう……」
涙に気づいたらしい男の手がぴくりと震え、気づけば切ない眼差しをしながら男はあたしを見つめ、そしてその手であたしの震える手を握った。
ああ、温かい――。
「あなたは誰?」
すると男は、哀しげに顔を歪めた。
今さらながらだが、この男もかなりの美形だった。
すらりとした体躯で理知的に整った――、一見冷たそうにも思える端正な顔だち。だが、男が温かいことは握ったままの手から伝わる。
「……あれだけ長く城にいたのに、俺のことは…覚えてないんですか」
泣き出しそうにも見える憂えた顔に、あたしは首を傾げた。
城の中……?
これだけの美形なら、お母様の傍にいたのだろうか。正直、いまいち城でのことは思い出せない。つい最近まで住んでいた城でのことなのに、詳しく思い出そうとすると、頭の中に白い靄がかかったように見えなくなるのだ。
「ごめんなさい、よくわからない……」
「そう、ですよね。あなたは姫だし……思い出されても、いいことはないし」
自嘲気な小さな笑いに、胸を突かれる。
どこかで馬の嘶く音がして、あたしは追手の到来かと身構えた。
「俺の馬です。これから、国に帰らなくてはいけなくて。ちょっと知り合いに挨拶に行ったら、あなたがいなくなったと聞いて…」
「知り合い?」
「ハルさん、です」
どくん。
あたしの心臓は縮み上がる。
「ハルの……知り合い?」
警戒心が沸き上がる。
「はい。ハルさんにお世話になっているものです」
顔に浮かぶは、純粋なる敬意。
だとすれば――。