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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

「触らないで!! ハルの……ハルの命令であたしを殺しに来たの!?」


 手を離して逃げ出そうとするあたしの腕を男は掴む。


「誤解だ。ハルさんは、あなたを殺そうなんて……」

「あたしに銃口を向けた!!」


 頬に伝い落ちるのは、雨滴なのか涙なのか。


「そして撃ったの!! ハルは、あたしと引き替えに、お母様から……」

「失礼」


 パシン。


 男が手で叩いたあたしの頬が、あたしの心のようにじんじん痛む。



「あなたは、あなたのことを嬉しそうに話すハルさんを知らない。あなたを失って取り乱すハルさんを知らない。それを知っていれば、そんな言葉は出て来なくなる」

「だけど、実際に……」


「あなたは追われていたのでしょう? ハルさんは、あなたを助けたんです、きっと」

「え?」

「あなたの傍に、本当の追手がいたんです」


 ……確かにあたしの近くには、ハルのことを噂する輩がいたけれど。


 押し黙ったあたしに、男は静かに微笑んだ。


「ハルさんが、あなたを殺すはずがない」


 彼の表情に浮かんでいたのは、揺るぎない絶対的な信頼。


「殺すつもりなら、とうにあなたは殺されていた。あなたはハルさんによって生かされている……その事実がなにを意味するのか、あなたはもっと熟慮すべきだ」

「だけど……」


 男はやるせなさそうにため息をついて言った。


「だったらこうしましょう。俺は明日、日が落ちるまで。ここに居ます。もしもハルさんを信じられないようであるのなら、俺と一緒に隣国に行きましょう」


「え?」


 突然の申し出は、あたしにとっては突拍子もないものだった。


 会ったばかりのこの男と、国を出る?

 確かにこの国にいても、あたしには明るい未来はないとは思うけれど。


 この男と……一緒に、国を出る?




「今度こそ、俺を……見て下さい」 




 続けられた言葉は、あたしの心を揺さぶった。



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