この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
男の目には、懇願の光が宿っていた。
僅かに震えるその唇から、絞り出したような声が吐き出される。
「俺は……、あなたを不安にさせません。あなたを守りたい」
辛そうに、だけど情熱的に、細められた切れ長の目。
「来てくれなかったら、俺は帰ります。
だけど来てくれたその時は……」
男に掴まれた双肩が痛い。
「俺はあなたを離さない。恋い焦がれていたあなたを……妻にしたい」
「……っ!?」
「あなたにとっては突然でも、俺にとっては……突然ではない。見ていました。いつもいつも城の中、ひとりでいるあなたの姿を」
男の声が熱に掠れていく。
「この手で抱きたくて癒やしたかった。俺を見て笑って欲しかった。だけど……あなたはハルさんの元で笑っていたから。それを知っていたから」
ハルは……初めて会った男だというのに、目の前の男は、ハルともこの男とも昔ながらの知り合いのように語る。
あたしの、隠されて見えなかった記憶の断片の中に、風景が見え出す。
消えていたその記憶は。
記憶は――?
だが思い出す寸前に、あたしは男に抱きしめられた。
意外に逞しい男の胸から聞こえる心臓の音は、あたしの心臓の音よりも早かった。
「あなたがハルさんを選ばないのなら。そこまでハルさんを恐怖するのなら。……だったら、俺をみて下さい。今の俺には、あなたを守る力がある。俺は、隣国の――」
男が言葉を続けようとした時だった。
どすっ。
鈍い音がして、吹き飛ばされた男が大木に打ち付けられていた。
「なにしてんだ、てめぇ……」
上げられた長い片足。
底冷えしそうな声で割り込み、威嚇したのは――。
「ハル……」
「ハルさん……」
激怒の形相をしている猟師。