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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)


 男の目には、懇願の光が宿っていた。

 僅かに震えるその唇から、絞り出したような声が吐き出される。



「俺は……、あなたを不安にさせません。あなたを守りたい」


 
 辛そうに、だけど情熱的に、細められた切れ長の目。



「来てくれなかったら、俺は帰ります。

だけど来てくれたその時は……」


 男に掴まれた双肩が痛い。



「俺はあなたを離さない。恋い焦がれていたあなたを……妻にしたい」

「……っ!?」


「あなたにとっては突然でも、俺にとっては……突然ではない。見ていました。いつもいつも城の中、ひとりでいるあなたの姿を」


 男の声が熱に掠れていく。


「この手で抱きたくて癒やしたかった。俺を見て笑って欲しかった。だけど……あなたはハルさんの元で笑っていたから。それを知っていたから」


 ハルは……初めて会った男だというのに、目の前の男は、ハルともこの男とも昔ながらの知り合いのように語る。


 あたしの、隠されて見えなかった記憶の断片の中に、風景が見え出す。

 消えていたその記憶は。


 記憶は――? 
 


 だが思い出す寸前に、あたしは男に抱きしめられた。

 意外に逞しい男の胸から聞こえる心臓の音は、あたしの心臓の音よりも早かった。


「あなたがハルさんを選ばないのなら。そこまでハルさんを恐怖するのなら。……だったら、俺をみて下さい。今の俺には、あなたを守る力がある。俺は、隣国の――」


 男が言葉を続けようとした時だった。



 どすっ。



 鈍い音がして、吹き飛ばされた男が大木に打ち付けられていた。



「なにしてんだ、てめぇ……」



 上げられた長い片足。


 底冷えしそうな声で割り込み、威嚇したのは――。



「ハル……」

「ハルさん……」



 激怒の形相をしている猟師。
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