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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
凍った心を氷解できるだけの俺の"強み"が、思い浮かばなかった。
俺に"大好き"とわかりやすく懐いてくれたのは、シズと出会った時の幼い頃ばかりで。シズが成長するにつれて俺は、シズに冷めた態度で接せられて煙たがれてきた。
再会後も、昔の記憶がないくせに、じゃれ合っている時ぐらいしかあいつは俺に甘えてこない。
俺は最初から、ひとりの人間として、ひとりの男として。シズの中では好意の対象ではなかったことを思い知らされるばかり――。
変えられると思った。
絆されると思った。
だから待っていた。
ひたすら俺は待っていた。
性に合わないことを、辛抱強く。
だが待っていた結果、どうなった?
疑心暗鬼。すべてが信じられない。
心を暗澹たる雲が覆い、心が闇色に染まる。
どこにも希望が見つからない。
それは陽光を遮るこの雨空の如く。
小屋から出る時は、こんな展開、まるで思ってもいなかった。
待ち受けているものは、光に包まれたものだと……そう思っていたのに。
奴から求愛されたシズは、土下座までして俺から奴を庇った。
そして奴がなにかを言いかけた一瞬、お前は奴に微笑んだ。
毅然たるその表情は――愛を知った女の顔で。
その愛ゆえに、奴を制して俺に平伏した。
――あなたの望むことはなんでもしますから、彼を許して下さい。
シズ、俺がどんな思いでいたのかわかるか!?
愛して愛して愛して!!
昔からお前しか見えない俺に。
お前を守るために人を殺して生き続けてきた俺を。
無法者の、ただの略奪者にしたんだ。
ああ、そうかよ。
俺をそう扱いたいのかよ。
だったらそうしてやるよ。
愛しい男の前から、お前を奪いとってやる。
もう遠慮などするものか。
お前は誰のものなのか、はっきりわからせてやる。
奴を殺さない代わりに、俺の望むことをしてみせろよ。
……娼婦のように。