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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

シズSide




「なぁ……シズ」



 今まで何度も聞いたその台詞に、甘い余韻はない。


 それは威嚇のような、危殆を孕んだ野獣の唸り声のように思えた。

 手負いの飢えた猛獣が、痛みにもがいている。


 痛ませたのは、あたしだと――。


 飢えを満たして苦しみをまぎらわしたいかのように、ただひたすらあたしの体を貪ろうとする…ハルという名の猛獣。

 命の危険まで感じさせる手荒な扱いに、非情な痛みを感じたあたしは何度も声を上げたが、ハルはとまらなかった。



 これがハルの本性であるのなら、今までいかに優しくされてきたのか。



 闇に浸かったような、ハルの澱んだ黒い瞳。

 いつもちらついていた蕩けたような熱はなく、どこまでも凄惨で暗澹たる色合いの、冷え切ったものに覆われていた。


 あたしが感じている体感温度以上の、凍てついたものを抱え込んでいた。

 それは殺気と似て、非なるもの――。


 殺して終焉を迎える刹那的なものではなく、永続的な嗜虐さに彩られた…荒みきった凍土だった。


 その寒さに、ぞくりとした時……目を塞がれた。

 嫌だやめてと叫んでも通じぬ声。



 噛みつかれた場所が痛くて。

 痛みの極みを植え付けられたように、胎内を貫かれた。


 ハルの、容赦ない怒りを感じて、恐怖と同時に哀しかった。
 
 そこにハルからの愛がないことを。


 まるで獣姦されているような結合。

 激痛の中、あたしを押し広げるようにして胎内に蠢く、この大きすぎる異物が悍しいと同時に、愛おしかった――。


 あたしは、ハルに抱かれたかった。

 その願いが叶ったのだと……。



 ねぇ、"奴"って誰?

 あの男は会ったばかり、崖から落ちそうだったあたしを助けてくれただけ。あたしのハルへの信頼感を回復させるために、あんなことを言っただけ。


 たとえハルがあたしの刺客であろうとなかろうと。

 どうでもいいほどに、あたしはハルが好き。


 繋がった今なら、素直にそう思えるんだ。


 溢れるほどの好きという想いが、ひとつになった部分から溢れている。

 抱擁では得られなかった充足感がそこにはあった。


 ああ、涙がでるほど幸せだ――。

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