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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

 おかしいのかもしれない。

 愛の欠片などなにもないこの状況、体を犯されて悦ぶあたしは変態なのかもしれない。


 憎めとひたすら言い続けるハル。


 憎めたならきっと楽になる。

 だけど憎めるはずがない。憎む理由がない。


 だってあたしは、ひとつになれて悦んでいるのだから――。



 体は正直だから、心も偽れなくなる。

 
 ああ、この想いを伝えたいよ。

 "あたし"を瞳に映して、あたしを抱いて欲しい。


 めちゃくちゃにしてもいいから。

 壊してもいいから。


 娼婦にしてもいい。

 奴隷にしてもいい。


 だけど、あたしだと。

 "お前"ではなく、あたしの名を呼んで下さい。

 

「ハル……」



 あたしは、愛おしいあなたの名前を呼ぶから。


 
「ハル、ハル……っ」


 何度も何度も、あなたがあたしを映してくれるまで。

 


 聞いて。

 お願いあたしの声を聞いて。


 叫び声は雨に、そしてハルの猛る声に掻き消されて。


 だけどあたしは見たんだ。


 闇しか映さないハルの瞳から、止めどなく零れ落ちる涙。


 痛い、苦しいと。


 あたしが感じている痛み以上に、その痛みを与えているハルの方が痛みに苦しんでいることを、あたしは悟った。


 そして同時に、思い出したんだ。


 記憶の断片の中に、浮かび上がる輪郭。


 ハルの涙――。


 苦しいと……今と同じように泣いていた、昔のハルの姿を。



 手には血の付いた短刀。

 震えるあたしを抱きしめ、泣きながらハルは言った。


――今まで気づかなくてすまん。辛かったな、よく頑張ったな。


 そして――。


――親父お袋……ナツ、すまない。俺のためにすまないっ!!



 あの顔は、ハルだった。

 傲岸不遜な隣国の王子様。


――誰が"おっちゃん"だ、コラア!!

――せめてお兄様にしろ!!


 あたしが苦手でだけど大好きだった……"ハル兄"。

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