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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
「今……なんて?」
雨にずぶ濡れになったハルが、その顔をあたしに向けて。
初めて……澱んでいたその瞳に、あたしが映った――。
「俺がなんだって?」
掠れきったその声は震え、驚愕に見開いた目からは、雨と混ざり合うように依然涙が零れている。
あたしが映っている……。
ようやく、ハルの目にあたしが映った!!
それが嬉しくて、その感動にきゅうと胸の奥が鳴って、あたしは言った。
「"おっちゃん"」
「誰がおっちゃんだ、ゴラア!!」
勿論、幼い頃を意識しての軽い冗談だったのだけれど、ハルには冗談とは思ってはくれなかったようだ。ここまで凄まじい反応が、昔のように返るとは全然思っておらず。
その上、即――、頭突きがきた。
しかも泣きながら怒鳴っての頭突きなんて、このひと、まさか弱ったふりして泣き真似をしてたんだろうか。
だけど――。
「え、シズ……? おっちゃんって……」
訝しげに首を傾げて反芻する様を見ていれば、故意ではなくただ条件反射で頭突きされていたようだ。
条件反射で反応する言葉とは、あたしには思えないのだけれど、なにが彼の刺激要素になるのか……。
ああ、そんなことより。
"シズ"
ハルから呼ばれた、ハルしか呼ばないその呼び方が嬉しくて。
思い出までもが"繋がっている"ことが嬉しくてたまらない。
「まさか、昔のことを……?」
あんな昔のことなのに、ハルも忘れずにいてくれた。
あたしの胸が熱く滾っていく――。