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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 

 ハルが構築した特別なルールを強要され、理不尽な扱いをされることに、昔も今も辟易していたけれど。

 だけどあなたがいてくれたからこそ、あたしは今、息をしていられる。

 あなたのおかげで、あたしは護り続けた純潔をあなたに捧げられた。

  

「思い出したよ、"ハル兄"」

「……お前…っ」


 ハルの喉仏が上下に揺れた。

 冷え切って青くなっているハルの唇が戦慄いている。


 そして体を離そうとしたから、あたしはハルの精悍な首筋に両手を回して抱きついて叫んだ。


「抜かないで、行かないで。このまま…このまま繋がっていたいの。あたしはずっと、ハルとこうしたかったのっ!!」

「……!!」


 ぶるりと、あたしの腕の中のハル兄が震えた。


「ハル兄、思い出せずにいてごめんなさい。そして――」

 
 ハルの唇に熱を分け与えるように、あたしは自らの唇を重ねた。


 降りしきる雨。

 体温を奪う雨。


 ハルの体が冷たくなるのなら、あたしが何度でも熱をあげる。

 ハルがあたしを助けてくれたように、今度はあたしがハルを助けてあげるから。



「好き……」


 唇を離して、まっすぐにハルを見て、あたしは微笑んだ。


「あたしはハルが好き。……昔から、好きだった」


 ハルはなにか言いたげに唇を動かし、瞳を揺らしてあたしをじって見つめ、そしてぎゅっと目を細めて、切なげな表情になる。


 言葉はなかった。

 だが言葉の代わりに、おずおずとハルの手が伸ばされて、あたしの両頬を挟む。


 昏い瞳に宿っているはっきりとした灯火は、雨の冷たさをはじき飛ばすほどの熱を孕んで。


「好き……? 俺が?」



 震えて震えて、戦慄くハルの唇。

 掠れきったその声音は、雨音に消されてしまうけれど。


 信じられないのなら、何度でも口づけよう。

 冷えた唇から出る言葉の代わりに、あたしの熱をあげるから。

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