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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
   


 身を捩って逃げようとするけれど、あたしはハルの腕の中。
 

「……もう、俺とお前は、身体を奥深く繋げて愛し合える男と女の関係なんだ。もう、何も憂うことなく、我慢する必要がねぇ関係なんだよ。


今さら、俺にも緊張……移すなって」


 それは余裕めいていながらも、微かに震えて。


 ハルも……緊張してたの?



「まだなにもしていないように……お前が想っていてくれたことすら、なかった時にまで戻そうとするなよ。まだ俺は長い片想いの中にいるように……、そんな不安にさせるなよ」


 あたしはゆっくりと振り返る。

 暗がりの中、揺らめく炎が妖しく照らし出すその顔は、憮然としていながらも妖艶で。だけどひどく不安そうで……。


 その頼りなげな様子に、胸がきゅんと疼いた。


「なぁ、シズ……」


 ぽたぽたと水を滴らす黒髪。

 それがうるさかったのか、ハルが片手で掻き上げた。


 しっとりと濡れた黒い瞳に揺れる、燻っている情熱の名残。

 それをあたしに魅せつけながら、あたしを挑発するような…射るような鋭い視線で捕らえようとする。


 斜め上から、魅惑的な捕食者はその野生の香りで、獲物を捕らえようとするんだ。



 ああ、なにその仕草、反則だって。

 ねぇ、そんなに艶気をだして、あたしを誘わないで。


 そんな真剣な顔で。

 そんなに切なそうに、そんなに愛おしそうに――。


 
「シズ……愛してる」


 
 愛の言葉を囁かないで。



「だから……抱きたい。

……抱いていいか、思いきり……」



 そんなに情熱の滾る瞳で、一心にあたしを求めないで。

 ぎらぎらと捕食者の眼差しをしているのに、捕らえた獲物のように弱々しく懇願してこないで。


 さっきのように、有無を言わさずあたしを抱けばいいじゃない。

 どうして、あたしの心を優先しようとするの?



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