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【SS】目が覚めたら…?
第1章 お正月に目覚めたら。
「お待たせしました、おせちです~」
そうしてナツが台所から、五段重のおせちを運んでくる。
「全部僕の手作りだよ。お重以外は全部食べれるからね。しーちゃんのお口に合えばいいなぁ。しーちゃんが喜んでくれるように、お醤油からして全部僕の手作りなんだよ?」
うわっ、眩しい――っ!!
どれもがプロの料理人が作ったかのように光輝く、華々しい料理の数々。
「ふふふ、シズルちゃん。ナツのおせちの味、100点満点の出来よ?」
佐伯ママが自信ありげに褒めちぎるだけあるナツの料理の腕は、どこぞの一流料亭のおせちか…とまでに、煌びやかに顕現されていた。
味付けして、見事な照りと艶具合で戻した分厚い昆布ひとつにしても、波打っていない…まるで薄く切った羊羹のような美しい四角形。説明されて昆布だとわかったくらいだ。
さらには野菜を、結び紐、装飾用にと…あますところなく使い切ったらしい、この器用すぎる繊細な出来。刃先で切り込みを入れて捻っただけだというけれど、簡単にできる代物ではないだろう。
お煮染めや昆布巻きという古風なものから始まり、カニや伊勢エビなど海鮮ものから、果物を使った創作的なものまでバリエーション豊かで、ただもう感嘆の声しか上がらない。
食べやすさ、見た目、上品な味……どれも申し分がない。
一口食べて、感動に泣けてしまったほどだ。
この子なにもの?
華道、裁縫、着付け、茶道……そしてお料理。
ナツの花嫁修行成果は半端ない。
すごいよ、この「嫁」。
ナツと結婚したら、なにもすることないよ。
どこまでつき切っちゃったんだろう、ナツ。
それでも嬉しい。
その腕の精錬さというよりは、あたしを喜ばせようと努力してくれていたその健気さが。
あたしが喜ぶと本当に嬉しそうに顔を綻ばせているナツが。