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【SS】目が覚めたら…?
第25章 【ファン感謝】白雪姫 ①猟師(ハル)
 




 そして数週間後――。


 国中に弔いの鐘が鳴り響く。



 それは"白雪姫"と名高い、美しい王女の死を悼むものだった。



 雪のように白い肌、黒壇のように黒い髪と瞳、血のように赤い唇。


 愛を知った王女の顔には生気はなく、色が失われていた。


 それでも彼女の死を悼み、どこまでもその姿を目に焼き付けたいと……、彼女は硝子で出来た棺に入れられ、人々に見送られた。


 棺を作ったのは、手先が器用な森の護り人――。

 彼が姫の棺を作る際に涙を流したことを、知る者はいない。


 弔いの鐘が大きく響き渡っている。


 城の上にある自室のバルコニーから、狂気の笑声を重ねているのは、王女の実母。



「ああっ、これで憂いはなくなった!!!」



 やつれて狂った彼女の姿に、以前の美しさは見当たらず。


 王位を継承した隣国の王子の正体も真意も確かめもせず、美しい男娼の貢ぎ物を受ける条件に、最後を看取って硝子の棺に入れたという王子に、簡単にその棺を譲渡した。


 いつまでたっても王妃は女。

 自分を満足させられるだけの極上の男を求める。


 去った男は見向きもしない。

 去る者は追わず、来る者は拒まず。


 身体も心も満たすのは、新鮮な刺激を与える男なのだ。



「王妃、隣国より参りました」



 その艶めいた声に、髪を振り乱したままの王妃は、嬉々として聞いた。





「鏡よ、鏡。

世界で一番美しいのは誰?」




 入り口にて傅(かしず)いていたその男は、ゆっくりと顔を上げて答えた。




「それは、お前の娘、シズルだ。

そして俺が……生涯愛する女」



 王妃に狙いを定めたその目は、超然として鋭く。


 ぎらぎらと…、積年の憎悪を滾らせた――

 野生の王者の貫禄を見せる……美貌の男。

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