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【SS】目が覚めたら…?
第26章 【ピックアップ御礼】その日……。
 

 驚きに口をあけているあたしにさらに追い打ちをかけたのは、そのハル兄本人で。


「母さんはきっと、いつもの通りご近所さんにお裾分け。でしょう?」


 ハル兄が……"母さん"? しかもなにこの物言い。

 "でしょう"って、なんでいつものように断定的ではないのか

 ねぇ、そのにこっと笑うの……。



「寒っ……」



 ハル兄の笑みが胡散臭い。

 ハル兄も笑い顔は見せるが、違う。

 こんな王子様のようなふんわり笑顔は、まるで似つかわしくない。


 サバンナにとうとう氷河期が訪れてしまったのか。

 天変地異の前触れか。


 あたしの頭の中で、サバンナの動物たちが大脱走を繰り広げている。


 両腕をさすりながら退いたあたしに、まずはナツがにっこりと威圧的な笑いで近寄ってきた。

 これこそがよくハル兄がする笑いで、そして……ブラックナツ。

 朝から、そこまで機嫌が悪いとはいかに!?


「それは熱かも知れないな。ここは寒さを感じる肌を温める原始的な方法として、人肌で人肌を温めるという方法をとるか」


 機嫌が悪い……ように見えて、機嫌がいいようにも見える。

 なにこの挑発的な好戦的な眼差し。


 まるでハル兄が発情した時のような……。


「そんなのいいから。長袖上に一枚羽織ればいいし、上のエアコン切ればいいだけだし」

「そうか、そうか、早く温めて貰いたいか」


 聞いちゃいないし。



 ナツ、ナツ、ナツ。

 朝から一体どうした!?

 そこまでピックアップされたのが衝撃的だったのか!?


「さあ、善は急げだ」


 そして問答無用で、あたしの服を脱がせにかかるんだ。
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