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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
絡み合った枝がすっと消えた、ひとひとり通れるほどの穴。
ぱっくりと空いた穴から、暗澹たる闇の冷気が吹き出て、あたしの肌をなめるようにしてざわめかす。
恐い……。
だけど。
「いたぞ、あそこだ――っ!!」
前進も後退も出来ないというのなら。
あたしは――前に行く。
今あたしが一番恐いのは、人間の殺意。
いるかいないかわからない……"噂"で生き続ける魔女の存在より、今現実として迫り来る殺意を振り切りたいんだ。
生きるために。
あたしは未知なる世界に飛び込もう。
新たな世界に飛び込む覚悟なら、城を飛び出した時についている!!
あたしは今、ここで死ぬわけにはいかないのだから。
「森に逃げ込むぞ、白雪姫を捕まえろ――っ!!」
あたしの身体が完全に森に飲み込まれた直後、再び枝が現れあたしを守る壁となり、追手を外にはじき出す。
絶叫。
悲鳴。
声だけが聞こえる森の外を、もうここから見ることはできない。
わかることは、追手は殺されたのだ。ある意志によって。
そしてあたしは、その意志によって、生かされた。
その意志とは、森なのか魔女なのか。
この先、天国か地獄か――。
カサッ……。
落ち葉で覆われた地面は、裸足で歩いていても歩きやすかった。だが適度の湿り気が、砂利を踏み続けて傷ついていた足裏に染みる。
ここからどうしよう。
まさかここに一生居ることにはならないわよね?
様々な不安は、鬱蒼と生い茂る木々に煽られ鬱々とした気分になるが、時折差し込む木漏れ日が、諦めるな、救いはまだあると励ましてくれているようで、それを瑞兆と思うようにしてあたしは歩き続けた。
"おいで、おいで"
なにかの音が聞こえる。
優しいこの旋律は、歌なのか声音なのかよくわからない。
"ひとりでは寂しいのなら、ここにおいで"
あたしはその音が気になった。
……呼ばれている気がして。
この先に、あたしの"救い"があるような気がして。
そのために、ここに来たような気がして。