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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「ここにも、ここにも……あれぇ?」
あたしの足元に来たそれは、顔を上げた。
くりくりと動く、つぶらなココア色の瞳。
ふわふわなミルクティー色の髪。
もちもちとした肌。
ぷっくりとした桜色の頬と、小さい口。
「可愛い~」
こんな可愛い子供を見たことがない。
しかも頭にちょこんと赤色の三角帽子を乗せていて、その愛くるしさにあたしの母性本能がけたたましくぎゅんぎゅんした。
ただ――小さい。目を瞠るほど小さい。
片手に乗りそうだと手を出してその大きさを推し量っていれば、その子供はぴょんと跳ね上がり、あたしの手の上に乗った。
片手ぴったりの大きさだった。まるでお人形のよう。
「お姉さんだあれ?」
きょとんと首を傾げたその仕草が可愛くて、思わず名乗ってしまった。
「ごめんなさい、勝手に入ってしまって。あたしの名前は、し……」
「しーちゃん?」
「え、あたし……し」
「しーちゃん、しーちゃんなんだあ!!」
喜ぶその子の笑顔が可愛くて、白雪でも"し"がつくには変わりが無いのだから、まあいいやと思って、にっこり笑って頷いた。
「貴方のお名前はなんて言うの?」
「ナツ!!」
愛くるしいこの笑みに、意識が遠のきそうだ。
なにこの可愛い生き物。
悶え死にそう。
「貴方の名前、ナツっていうの。ここはナツのおうちなの?」
「うん、僕達のおうち!!」
僕"達"?
その時聞こえて来たのは陽気な歌声。
♪ハイ○~、○イホ~、仕事が好き~♪
「ああ、休憩しに皆帰ってきた!! 皆、皆……っ、しーちゃんが来たよ!!」
手を握ってスキップしながら外から入ってきたのは――。
「しーちゃん!?」
「しーちゃんだって?」
「しーちゃん!!」
「しーちゃんだっ!!」
「しーちゃん、しーちゃん」
あたしの目や耳がおかしくなったわけではないらしい。
横にずらりと並んだ5つ同じ顔。
ナツが分裂したような見事に同じ顔形。
違いは各々が頭に被っている三角帽子とそれと同じ服の色だ。
全員、初めて会うあたしを、"しーちゃん"と呼ぶことになんの抵抗もないらしい。