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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
「しーちゃん、初詣に行こう?」
家に戻ってからなんのアクションもなかったナツが、2日の朝になった途端に、突如精力的に動き出した。
一刻も早く修行の成果を見せたいらしいが、こんな不意打ちだけはやめて欲しい。そう言うと、ナツは"今は"やめると、渋々と……トイレに駆け込んだ。
昨夜……黒い振り袖を着せてあたしをドライブに連れ回したハル兄は、自宅に近づいてくると、ナツの着物に着せ替えた。
そのナツの着物で外出して欲しいとナツに懇願され、さすがに二日連続ノーブラノーパンの痴女にはなれず、下着の線が着物に響かぬようなものを選んだあたし。
……とは言っても、ノーブラノーパンを強く望んだナツを宥めるために、ナツが持って来た…フロントホックの白いフリフリを選んだだけなのだが。
あたしが受け取った瞬間、にやりと意味ありげな笑いをしたのはなぜだろう……?
ナツが上着を持ってくる間、玄関に立っていたあたし。
タバコの煙が鼻を掠めた。
すぐそこの角で、ハル兄がタバコを吸っているらしい。
「ハル兄?」
返事の代わりに……左手を取られ、指を絡められる。
90度の位置に立つあたし達。ハル兄は、前日の残火を煽るかのようにあたしの指を卑猥にまさぐっていた。
丁度その時ナツが階段から降りてきて、あたしは手を離そうとしたのだが、ハル兄はそれを許さず、ただあたしの薬指をぎゅうぎゅうと指で締め付けるようにして強調させた。
"忘れるな"
まるでそう言っているかのように。
「お待たせ。じゃあ行こうか、しーちゃん」
ハル兄の存在に気づいていないナツは、王子様スマイルを見せながら、あたしの右手に、いつものように自然に指を絡ませてくる。
同時に……左手からハル兄の手がするりと解けた。
なくなった温もり。
なくなったタバコの香り。
「あれ、タバコ……波瑠兄いるの?」
ひょいとナツが角を覗いた。
「……いないね。なんだかいたような気がしたんだけれど……」
どこかで、パタンと部屋のドアが閉まるような音がした気がした。
静かに、ひっそりと――。