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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
佐伯家から歩いて10分弱くらいの場所に、あたしがよく通っていた古い神社がある。
そこで12年ぶりの正月参りを希望したあたしに、ナツはにっこりと微笑み同意してくれた。
足袋に草履。着物には白いショールを巻いてしゃりしゃりと歩く。
今日は昨日よりもちょっと気温が冷たいようだ。
ナツと手を繋いでいるとはいえ、冷気に晒された手の肌を少し痛く感じた時、ナツが繋いだ手ごと自分のコートのポケットにいれた。
「うわ……ナカ、ぽかぽか」
ポケットの中は、あったかカイロが用意されていた。
ナツが上着を取りに二階に上がってから、降りてくるまでに少し時間がかかっていたのは、カイロを準備していたからか。
顔を綻ばせて喜べば、嬉しそうにナツは笑う。
「しーちゃんのナカは、もっとぽかぽかだよ? 気持ちいいだろうね。僕も気持ちいいし、しーちゃんだって気持ちいいよ? 早く気持ちいいことしたいね。あ、だけどデートも楽しもうね。デートで愛を育ててこその気持ちよさだから」
にっこり。
そして、ポケットの中では、ナツの手がにぎにぎ。
………。
願い叶わず消化不良で強制終了させられた変態王子の頭の中は、そればかりなのだろうか。
卑猥な思考回路を、まるで感じさせないこの爽やかな微笑みが小憎たらしい。
そんなナツの頭の上に、お花が新年初めてぽっぽと咲いた。
にこにこのお顔で、ゆらゆらと左右に頭を振ってあたしを見ていれば、あたしには無粋なことは言えない。逆に、卑猥な土壌でも頑張って生きてね、と励ましたくなる。
おそるべし、ナツのポケット。
ナツの優しさの再認識よりも、卑猥話に至らしめて、ナツのお花を咲かせるとは。