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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
毎日自己主張が激しいナツ達と暮らしていたからなのか、彼の慎み深い笑顔と物静かな物腰に、ついつい目を奪われてしまう。
彼の動きひとつひとつが、礼法を身につけているかのように優雅であり、これなら王女生活が長いあたしの方が、お行儀が悪い。特に今のあたしは。
なんだか気恥ずかしくて、無意識に内股加減になった足をもじもじと擦り合わせてしまう。
清涼さを感じさせる彼の身形は、決して高貴なものとは言えず、旅人のような黒いマントもところどころ綻びて、生地や飾りすら質素だけれど、漂う雰囲気はただの平民ではない気がする。
サクラと呼ばれた彼は、誰だろう?
大体なんで森に入って来れたのだろう。
自らの意志で?
それとも森に選ばれて?
だったら彼も、この森のどこかに住んでいるの?
好奇心に気が昂ぶり、ドキドキする。
あたしと同じ立場かも知れないと思ったためか、妙な親近感が芽生えてその仲間意識に警戒心が薄れてしまう。
「あれ……?」
彼はまとわりつくナツを笑顔で相手をしながら、ようやくあたしの存在に気づいたようだ。
視線が――合う。
じりじりと痛いのにどこか優しい、この眼差し。
あたし、どこかでこのひとに会っている?
既視感を感じて戸惑うあたしの前で、眼鏡のレンズの奥にある神秘的な黒い瞳が、訝しげに細められる。
「あなたは、まさか……」
そして。あたしを見てその細められた目は、信じれないというように大きく見開き、その瞳は動揺に激しく揺れていた。
さらさらと、彼の艶やかな黒髪が、開け放たれたままのドアから流れ込む風に揺れる。
時が止まった、気がした……。