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【SS】目が覚めたら…?
第3章 Ⅱ.ナツと……
悲しい。
恥ずかしい。
やだ。
こんな惨めな思い、ナツに感じさせたくない。
ナツは……本当の若さがある。
あたしとは違うんだから――。
「ナツ……ごめんね」
「しーちゃん!?」
あたしは、ナツの横を走り去った。
居たたまれなくて、早くナツから遠ざかりたかった。
ナツから離れれば。
ナツはきっと、笑われずにすむだろう。
趣味が悪すぎると嘲笑を受けずにすむだろう。
「ねぇねぇお兄さん。あんな若作りの年増なんてやめてさ、18歳の私にしない?」
「そうだよ~。ねぇ、カラオケいこ、ねぇ!!」
ほら、ナツはモテる。
女はあたしひとりじゃない。
あたしだって、眠らなければ……18歳は経験出来た。
19歳も、20歳も。
気づいたらアラサーで、あたしの幼なじみ達が昔と同じく接してくれるからいい気になって……。
だけど所詮あたしは……心が年齢に追いついていない、中途半端な年増なおばさん。あたしの感覚は、外部からは違和感でしかない……。
涙が出てくる。
あたしはナツとは歩けない。
ナツが笑われてしまうんだ――。
なにか怒声が聞こえるけれど、あたしは聞き流した。
無我夢中で走る。これ以上ないというほど必死に走る。
鼻緒が切れて転んでも、それでも足袋で走った。
冷たいアスファルトの上、温もりを与えてくれる存在を振り捨てて。
帰りたい。
ハル兄がいるおうちに帰りたい――。
そんな時、ドンと誰かにぶつかった。
「あぶね……って、あんたかよ!!」
さらさらな黒髪。
黒縁眼鏡の理知的な美貌。
それは着物姿で歩いていた、モモちゃんだった。
「あれ、今日はナツといるはずじゃ。ナツは……」
「モモ……モモちゃん。うわあああああ」
「ちょ……ちょっ!! と、とりあえずこっち、こっちに来いっ!!」
「モモちゃああああんっ!!」
「なんで参拝に来た俺がこんな目に。姉貴達とはぐれてたのが不幸中の幸いだったけど……くそっ、ナツ、このひと野放しになにしてんだよっ!!」