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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
チチチチチ……。
軽快な小鳥の囀(さえず)りに、どろどろとした眠りの深層に沈んでいたあたしの意識は浮上した。
心地よい自然の音楽と共に、鼻を擽るのは、できたてのパンの美味しそうな匂い。
ああ、いつも通りだ。
あたしは、哀しくなるような夢を見ていただけだったんだ。
類い希なる美貌と性技を持つ大人のナツと引き替えに、他のナツ達が消えるなど。大人になったナツと、心ではなく身体を繋げてばかりのいやらしい関係になったことなど、夢の出来事だったんだ。ありえなかったんだ。
きっとこの扉を開けると、7人のナツはとびきりの笑顔を見せてあたしにまとわりついてきて、一斉に喋り始める……そんなほのぼのとした幸せに満ちた毎日が始まる。
可愛いあたしのナツは、どこにもいかずにここであたしと一緒にいてくれる――。
身体に咲いたままの赤い華を見ぬふりをして、全裸の身体にシワシワのシーツを巻き付けて、期待に顔を綻ばせて扉を開ける。
「あ、しーちゃん起きたの?」
優しい声。
ほら、いつも通りだ。
あたしを笑顔で迎えるのは――、
「おはよう、元気そうでよかった。今日もまた、たくさん愛し合おうね。昨日より、もっともっとえっちなこと、しよ? さあ、スープに滋養強壮の草をいれたよ。だからきっとこれを食べれば、またえっちな気分になって僕と愛し合える。また僕が欲しくなるよ。痛みすら感じないほどに」
爽やかさ以上に、意味ありげな妖艶な笑みを見せる、大人のナツ。
中断した性交を求めるその声からは、愛情よりも病的なまでの切実な圧が勝って聞こえる。
夢じゃない――。
ナツは、このひとりだけしかいないんだ。