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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
「僕に隠れてこそこそと!! いつからだ、いつから僕を欺いて……っ。だけどしーちゃんは僕のモノだ。しーちゃんを女にしたのは僕だ!!」
「ナツ、お願いだから……」
羞恥で居たたまれなくもなったあたしの願いは、またもや却下される。
「僕が、しーちゃんを女にしたんだよっ!!」
絶叫のような声に、サクラの顔が悲痛に歪んだ。
泣き出しそうなその顔に、ナツもまた似たような表情を浮かべながら、口元だけは笑みを浮かべて。
やがて、宥めるようにサクラの鎮められた声が響く。
「ナツ、俺はシズルさんとどうこうするつもりはない。勘違いだ」
「勘違いで、突然現れたお前の上にしーちゃんが乗るかよ!! 僕より先に、なんでしーちゃんに会っているんだよ」
「ハルさんが、嫌な予感がするから先に見てこいって連絡があった。そうして来てみたら、このひとが泉で沈んでいたから、自殺しようとしているのかと……」
「は!? なんでしーちゃんが自殺!? ありえない嘘をつくなっ!!」
「嘘じゃない。それにナツ、お前その姿には……」
「お前に関係ないだろう!? 僕は僕の意志で決めたんだ。お前に口出しされる筋合いはないっ!!」
「ナツ、このままだとお前はっ!!」
掠れたサクラの声に、やけに硬い声を落とすナツ。
「それを承知で、僕は彼女を抱く。いくらお前がしーちゃんを想おうとも、お前の出る幕はない。行くよ、しーちゃん」
ナツはあたしごと歩き出す。
「ナツ、早まるな。なんとかして俺が」
「方法はないんだよっ!! だからしたいようにする。せめて、僕を哀れに思うのなら、あさっての朝に来い。そうハル兄にも伝えて」
「ナツっ」
「今までありがとう、サクラ。くしは折った。だから、やがて鏡の効果もなくなるだろう。お前を森が襲う前に、早くでろ」
「ナツ――っ!!」
叫ぶサクラが小さくなっていく。
「ナツ、サクラが……」
「その名で僕を苛立たせるなっ!!」
向けられたその瞳にあるのは、憎悪にも似た苛立ち。
その深淵には、さらに深い悲しみがある。
それに息を飲んだあたしは、聞こえなかった。
「……せっかくこの姿になったのに。僕は、道化では終わらせない。たとえしーちゃんがサクラが好きでも」
その不穏な言葉の真意を。